勉強せずについ遊んでしまう。そうならないためにはどうすればよいか。
2021年の心理学研究結果を参考にしながら、「誘惑」(遊び等)に負けずに「目標」(勉強等)にとりくむための方法をいくつか紹介します。個人差もありますので、本人に合っていそうな方法を試してみるのがよいかと思います。
1「誘惑に対して物理的な距離を取る」(※1)。
例えば、机の上にマンガなど遊びに関係するものを置かない、勉強をする場所に遊びに関係するものを置かない、というように簡単に実行できることがたくさんあります。
作家の曾野綾子さんは、子どもが小さいときにテレビを買わなかったそうです。「時間をつぶすために子どもは本でも読むしかなかったのである」と言っています。かなり極端な話ですが、この方法の応用です。
そこまでしなくても、勉強するときにはスマホを離れた場所に置いておく、というようなことでも十分に効果があります。
作家の宮城谷昌光さんは、同時に複数の小説を書くときにはそれぞれ別の部屋で書いたという時期がありました。これは、一つの小説を書くときに、もう一つの小説のアイディアや雰囲気がはいってこないようにするためです。もう一つの小説は「誘惑」ではないかもしれませんが、今していることに対して気がちらないようにするという点では、やはり「物理的な距離を取る」方法の応用です。
私もこの方法を取っています。ついついネットサーフィンをしてしまうので、授業準備などをするときは、スマホを別の部屋においた上で、インターネットにつながらないパソコンを使っています。
この、「誘惑から物理的な距離を取る」方法は、簡単にできる上、人を選ばず比較的誰にでも合うことが確かめられています(※2)。勉強する環境をもう一度点検してもいいかもしれません。
机の上を片付けるというのもこの応用ですし、例えば国語の勉強をするときには他の教科をおかないというのも人によっては効果があります。他の教科のものをおいていると、国語に飽きたときに、地図帳を眺めてしまうということもあるからです。
逆の例で言えば、リビングで勉強しているときに近くで家族がテレビを見ているというのは、この方法の逆のことをやっているわけで、悪影響があると考えられます。
以前教えていた子で、一つのことが終わったら必ず片付けてから次の勉強にとりかかる生徒がいました。同じ国語の勉強中でさえ、そうなのです。漢字のプリントが終わったら鞄の中にしまってから(急ぐときはたたんで机の隅に置いてから)、次のプリントを取り出していました。決してプリントを放り出したまま次に取りかかるということをしません。気が散る要素をなくして集中するという意味では、この方法の応用です。集中力があり、よくできる生徒でした。
さらに言うと、望ましいのは、勉強するときに親が無理やり「誘惑」(上述のようなマンガ、スマホなど)を遠ざけてしまうのでなく、子どもが自分で別の場所におくというように、自分で「誘惑から物理的な距離を取る」習慣をつけることです。無理やりでも効果はありますが、やはり不満がくすぶることもあります。自分でする習慣をつけておけば、この後ずっと、たとえば仕事をするときにでも役に立つと思います。
※1 Fujita, Trope, Liberman, & Levin-Sagi, 2006; Thaler & Shefrin, 1981
※2 湯, 外山, 三和, 長峰, 海沼, 相川2021