マラソンのコツに、あの電柱までがんばろうというのがあります。あと何キロあると思うとくじけそうになるけれど、電柱までならがんばれる。それを繰り返すのです。
これは「目標をより具体的で低次なレベルで解釈する方略」(※1)の一種です。
何十キロという抽象的なものに対して、人間はがんばれないのですが、電柱まで走るという具体的で低次なレベルならがんばれる、というわけです。
住宅ローンを勧める銀行員が、何十年お金を払って下さいと言わず、一月に○万円だけですよと言うのも同じことです。
勉強するときも、あと何時間やらなければならないとか、何ページとか考えるとうんざりしがちですが、とりあえずこの問題を30分やってみようと考えると、とっつきやすくなります。それを繰り返すのです。
また、いったん始めるとあとは続きやすくなります(目標実行方略 ※2)。
同様に、「中学入試に合格」と考えるよりも、「次のテストで何点取る」とか「塾のクラスを挙げる」と考える方が「具体的で低次なレベルで解釈する」ことになり、取り組みやすくなります。さらに、○○算をできるようにするとか、漢字をいくつ覚えるなどと、より具体的で低次なレベルにすることもできるでしょう。
常に模試で一、二番を取っていたある小学生女子は、「志望校合格とかテストで上位に入るとかは考えてなくて、習ったことをできるようにすることだけ考えてる。そしたら、テストの結果もよくなる」と言っていました。これも目標を具体的で低次なレベルに解釈する一例です。
注意点は、それだけが目標になってしまい、視野がせまくなる危険があることです。
勉強をする気がなかなか起きないときの対処療法として考えるのがよいでしょう。
※1 Fujita, Trope, Liberman, & Levin-Sagi, 2006; Thaler & Shefrin, 1981
※2 ブログ「どうしてサボっちゃうの? その3」(第一章 年齢別学習法-すべての年齢-② やる気を出す方法 2021-11-22)